フィリピンのセブ島滞在時に、親しくなったジムのオーナーから、フィリピン武術の先生を紹介してもらいました。
たくさんの流派がありますが、セブ島発祥の二大流派の1つを学ぶことができました。
世界遺産、全部行ったら海賊王!
2018年1月21日~4月21日 フィリピン・セブ島滞在
国技ARNIS
2009年にフィリピン国技になったフィリピン武術「アーニス(Arnis)」。
実際の発音はアルニスが近いので、アルニスで統一します。
セブ島では「エスクリマ(Eskrima)」と呼ばれていましたが、アルニスに統一が進んでいるようです。
日本では「カリ(Kali)」という名前で多少知られていますが、武術家ではない一般のフィリピン人は全く知りません。名前は違いますが、やっていることは同じです。
フィリピン武術は、いろいろなジャンルのものがあり、名前も種類も多く非常にややこしいので、最近は全部ひっくるめて、「Filipino Martial Arts(FMA)」と呼んだりもします。
フィリピンの正式な国名は”Philippines”です。「フィリピンの」となるとFが頭文字の”Filipino”です。
由来は、スペイン支配時のフェリペ皇太子(フェリペ二世)にちなんでのものです。フェリペ二世は、スペインの世界遺産に関する歴史の中では、最重要クラスの王です。
アルニスは、70cmくらいのラタンスティック(または竹、木)やナイフ他、様々な武器を使う「武器術」を含む武術で、多くの流派が生まれています。
近年、映画やテレビドラマなどで使われ、日本での知名度も上がっていますが、どちらかと言うとアメリカ由来の「カリ(Kali)」、または「カリ・シラット(Kali-Silat)」が大半です。
カリ・シラット(Kali-Silat)
日本とアメリカで、カリ・シラットは15年以上やりましたが、英会話学校の若いフィリピン人の先生は誰もその名を知りませんでした。
国技であるアルニスのことだと言うと理解します。しかし、アルニスも武術というよりスポーツの印象です。日本の剣道をさらにソフトにしたような感覚です。スポーツチャンバラ?
カリ(Kali)は、Cebuano(セブ語・ビサヤ語)であるKamot(手)とLihok(動き)の頭文字Ka+Liから来ているようですが、武器や剣士を表す言葉「Kalis」から来ているのではないかと個人的には思います。
アメリカのKaliも言葉の多くは、ビサヤ語から来ているようですし、Kaliの第一人者ダン・イノサント(Dan Inosanto)の師の一人であるフローロ・ビリャブリェ(Floro Villabrille)は、セブ島近くのバンタヤン(Bantayan)島の出身なので、源流は同じようなものです。
バリンタワク(Balintawak)
2018年の滞在中、セブ島で学んだのは、セブ島の二大流派の一つバリンタワク(Balintawak)でした。
日本でこのスタイルをやっている方は、私の知る限りほとんどいないようです。バリンタワクは、シングルスティックに特化した技術体系で、接近戦での有効性が非常に高いです。
近年、本やネットに説明や歴史が載っていたり、Youtubeに動画がいろいろあるので、詳しいことは省きますが、フィリピンでBalintawakの歴史を研究すると、実戦的なものを追求していることが、かなりわかりました。
しかし、元々はこのBalintawakと抗争を繰り広げていた二大流派のもう一派「ドセ・パレス(Doce Pares)」に行くつもりで、留学先をCebuにしました。
2014年秋にお会いした「カコイ・ドセ・パレス」のグランドマスター「キリアコ・”カコイ”カニエテ(Criaco “Cacoy”Cañete)」は、2016年にお亡くなりになっていました。
2018年の訪問時、そのカニエテ道場の「Doce Pares Style」を学ぶつもりでした。
カコイ・カニエテは日本で柔道や合気道を学び、エスクリマ+◯道 → エスクリドを創始しました。
しかし、何の運命のいたずらか、抗争相手だったBalintawakを学ぶことに…
Balintawakの実質的な創始者、ヴェナンシオ・”アンション”・バコン(Venancio “Anciong” Bacon)は、1960年代頃に待ち伏せに会って襲われましたが、逆に相手を殺してしまい、収監されてしまいます。
しかし、それは言い換えると実戦的な武術であったため、自分は殺されずに済んだとも言えます。その後、社会復帰しますが、その数年後に亡くなりました。
アンション・バコンの高弟「クリスプロ・”イシン”・アティリョ(Crispulo”Ising”Atillo)」は健在で、今はアメリカのカリフォルニア州で指導しています。
かなり小さなじいちゃんです。身長150cmないと思います。が、伝説の達人は皆小さいのです。
今回セブ島でプライベート・レッスンをしてくれた先生は、そのGM(グランドマスター)アティリョの一番弟子で、さらに空手と大東流合気柔術の先生でもあり、軍隊に指導もしている強者でした。
アルニスは武器術として、各国の軍隊に取り入れられたり、知人の警察官が研究したりしていますが、実際には一般人向けではありません。
いろいろな武器の使い方や技を習いますが、普段武器を持って歩いていたら即逮捕です。
フィリピンは危険度が高いので、金属製の伸縮ヌンチャクを護身のために持ち歩いていましたが、商業施設などでは常に持ち物検査があり、まず持込めません。
結局、そのヌンチャクはアルニスの先生にあげました。
対武器の練習は必要ですが、普段は素手なので間違いなく素手の技術が最重要です。
アルニスも含めて、学んだ様々な武道、格闘技などは、よりシンプルにし実際に路上で役立つように整理、研究、実践中です。
学んだバリンタワクはこんな感じです。
バリンタワクは、ダブルスティック(二刀流)やエスパダイダガ(スティックとナイフ)を排除し、シングルスティック対シングルスティックの技術体系に特化しています。
アルニス自体、こういう棒状武器を持たない限り使うことはないので、刀を持ち歩かない現代日本人の剣道や剣術と同じような感じです。
護身術というよりは伝統技術ですが、そいういうもので襲われた場合を想定することは重要だと思います。
バリンタワクは、毎週2時間、2ヶ月半プライベートレッスンで習いました。初心者じゃないので、先生もやりやすかったようです。
その後、セブからシドニーへ。シドニーではクラヴマガを少しやりました。これはイスラエルの軍隊格闘技です。
クラヴマガジムは日本より高額でしたが、生徒の半数は女性で、フィットネスを取り入れた護身術のプログラムなど、こちらも大変参考になりました。
そしてシドニー滞在時に、アティリョが、ロサンゼルスでセミナーを開催することを知ったので、急遽ロサンゼルスへ!
ロサンゼルス
2018年6月29日~7月3日
オーストラリア留学と世界遺産巡りを終え、8年ぶりにLAへ。シドニー→広州(中国)→LAとかなりの長旅でした。
目的地はマリナ・デル・レイにあるイノサント ・アカデミー。
ブルース・リーの弟子でもあり、世界中の武術に精通したダン・イノサントの道場です。
生まれて初めて行った海外の都市が、ロサンゼルスでした。
時は2004年、ブルース・リーの創始した截拳道(Jeet Kune Do)を学びに来たわけですが、Kaliもちょっとだけやりました。しかし、あの当時は何が何だかわかりませんでした。
今回、アティリョにお会いして、あなたの弟子の弟子です、と言うと、めちゃくちゃ喜んでくれて、終始ご機嫌でした。このアティリョが、伝説の達人カコイ・カニエテの最後のデスマッチの相手でした。
アティリョの二日間のバリンタワク・セミナーは、非常にレベルが高かったですが、マニアックすぎたので使うことはないでしょう。
さらには新たな人脈もできました。
人脈を作りに行ったわけではないですが、連絡先を教えてくれと言われたり、セブ島在住のフィリピン武術協会の方とセブ島でまた会う約束もしたり、結果的にネットワークが広がりました。
イノサント先生にお会いするのも12年ぶりでした。82歳になってましたが、アメリカ中でセミナーを行っており、まだまだ健在です。
ハリウッド俳優に武術指導している方々にも、10数年ぶりにお会いできました。世界遺産マンが、ハリウッド映画に出演するか、または制作する時には協力をお願いしたいと考えています。
ハリウッド(Hollywood)
そして映画の都ハリウッドへ。こちらも2006年以来、12年振りでした。
…しかし、以前よりも多少荒んだ感じがしていました。
以前はいなかったハリウッド通りにも、ホームレスがいました。しかも何か落ちているものを食べながら大声でわめいているのです。子供は怯え、観光客もドン引きです。
イノサント・アカデミーがあるマリナ・デル・レイにもホームレスが増え、路上にゴミを投げ散らかしながら、走っている車に怒鳴っている頭おかしい奴もいました。
トランプ政権で好景気というのは、真っ赤なウソでございます。
…しかし、人間、ダークサイドに落ちてはいけないのです。
この翌日、コロラド州デンバーへ初上陸。「ファースト世界遺産」の一つに行ってきました。招待してくれた友人(変人?)もイノサント・アカデミーつながりです。
世界遺産、全部行ったら海賊王! オーストラリアの世界遺産をいくつか回った後、シドニー→ロサンゼルス→デンバーにやってきま…
さて、世界遺産を巡る旅、今のところ何のトラブルもありませんが、いつ何時何が起こるかわかりません。
フィリピンでは道路に信号機がほとんどなく、歩行者は命がけで道路を横断します。
車は一応止まりますが、たまにクラクションを鳴らして歩行者をどかそうとします。
とにかく道路は危ないし、セブ市内中心部は排気ガスもすごく、大気汚染がひどい所でした。
あと危ないのは銃なので、銃の弾が避けられれば、免許皆伝です。
合気道の開祖「植芝盛平翁」は猟銃の弾を避けたという伝説の持ち主です。元気があれば何でもできるのです。
理論的には、漫画「ワンピース」で言うところの「見聞色の覇気」なので、鍛えれば習得は可能と思います。
鍛えすぎると近未来が見えるらしいので、さらにいいことです。
ワンピースと言えば、フィリピンでも大人気で、「ドラゴンボール」、「スラムダンク」と共に、知名度は高いです。
さて、最初にセブ島でフィリピン武術の先生を紹介された時に、その先生の道場まで通うと言いましたが、外国人は誘拐されるから駄目だと言われました。さすがはフィリピン…恐ろしい国です。
フィリピン武術について最も詳しいのは、この本だと思います。
迷わず行けよ、行けばわかるさ、世界遺産